ビール時報

富江弘幸(ビールライター)公式サイト

ホップの里からビールの里へ。遠野が醸す地域の未来

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ビールが地域を醸しはじめている!

1994年の酒税法改正後、各地に小規模醸造所が生まれ、「地ビール」がブームになりました。しかし、数年でブームは終息。その理由としては、

  • クオリティが悪かった
  • 味が理解されにくかった
  • 価格が高かった

という3点が挙げられます。

 

そういった理由によって地ビールブームは終わってしまいましたが、00年台後半から「クラフトビール」が次第に認知されるようになります。

 

「クラフトビール」と「地ビール」は、そもそもルーツが異なるもの。ですが、消費者からはほぼ同じものとして認知されています。ただ、地ビールブームのときと異なるのは、地ビールブームが終息してしまった理由のうち2つが改善されているということです。

  • クオリティが高いビールが増えてきた
  • 味が理解されるようになってきた

この2点です。価格は相変わらず全体的に高いですが、クオリティが高く、味が納得できるものであれば、消費者はそれにお金を払います。そういった意味で、クラフトビールはブームから文化になろうとしています。

 

このあたりをもう少し詳しく知りたい方はこの本をご覧ください↓ 

教養としてのビール 知的遊戯として楽しむためのガイドブック (サイエンス・アイ新書)

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なぜいま遠野に注目しているのか

上記の通り、地ビールとクラフトビールのルーツは異なります。しかし、各地域に生まれたクラフトビール醸造所は、徐々に地域に目を向けるようになっていきました。

 

よく見られるのが、地域の特産品をビールの副原料として使用する方法。さつまいも、桃、オレンジ、山椒などを使ったビールが、各地で生まれています。これは比較的やりやすい地域とのつながり方だと言えるでしょう。

 

言い方を変えると、地域の特産品でビールをデザインしている、と言えます。

 

しかし、今回注目したい遠野は少々事情が異なります。そこで起こっていることは、ある意味でこれとは逆。ビールで地域(コミュニティ)をリデザインしている、と言えるような気がしているのです。

 

遠野は日本有数のホップ生産地。栽培面積では日本一です。

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その遠野では、上閉伊酒造が造るズモナビールというブランドが、20年くらい続いています。そして、その遠野で2018年5月に新たに立ち上がったのが、遠野醸造。

 

遠野醸造がどんな醸造所なのか、ひとまず動画を見てください。

 

遠野のホップ農家は、高齢化もあってピーク時の7分の1にまで減少してしまっています。これに危機感を抱いたのが、遠野市とホップ農家と契約していたキリンビール。

 

そして、遠野市とキリンビールが一体となって、「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に、ビールを中心としたまちづくりを進めるようになったのです。そこに移住してきた3名が、遠野醸造を立ち上げました。

 

遠野醸造のアドバンテージ 

遠野はホップ農家の減少が続いているとはいえ、現在でもホップの栽培面積日本一。醸造所とホップ畑が近いというのは、フレッシュなホップを使って醸造できるということだけでなく、その他のブランディングとしてもメリットがあります。

 

例えば、こんなことも。

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ビアツーリズムと題した、ホップ畑の中でビールと料理を楽しむ企画。ホップに囲まれて飲むビールは最高においしいものです。

 

また、ホップ農家として遠野に移住してきた人たちもいます。 

 

遠野のアドバンテージとしては、ホップだけでなくビールに関連する食材も含めてブランディングできるということ。具体的には、この動画にもあるように、パドロンがそのひとつ。そして、ホップやパドロン栽培も変えていこうとしているのです。

 

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こちらは今年から栽培を開始したホップ畑。これまでのホップ畑と何が違うかというと、平坦で広大、かつ、できるだけ栽培・収穫をオートメーション化できるということです。

 

実は、ホップの収穫はかなりの労力がかかります。

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遠野では収穫時期になると、栽培状況を見て各農家の収穫日を決定。収穫日の農家の収穫をみんなで手伝っています。

 

このホップ栽培・収穫の方法を変えていこうという試みが、いま遠野で進んでいるのです。

 

遠野ホップ収穫祭は8月24日、25日に開催!

ちなみに、7月13日のホップ畑の状況はこんな感じ。

収穫までもう少しです。 

 

そして、今年で5回目になる遠野ホップ収穫祭が8月24日、25日に開催されます。ホップの収穫を祝い、ビールと地元の食を楽しむお祭りです。

www.lets-hopping.com

 

クラウドファンディングも実施中。

camp-fire.jp

 

 

今年の夏は、ぜひ遠野へ。

 

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