SORACHI1984のイベントで丸くならずに星になりたいと思った話
性格的は基本的に丸いほうだと思っているんですが、やはりどこか尖ったところは持っておきたいとも思っています。少しカッコよく言ってしまいましたが、簡単に言うと中二病です。
どこか尖っていたいなんて思っているから、ビアライターという仕事をしているのかもしれません。丸くなりたくないし、どこか尖っていたい。いや、ビールが好きだからやってるんですよ、もちろん。尖りたいからやっているわけではなく。
でも、どこか尖りたい精神(中二病)は死ぬまで持っているんだろうなあ、なんて思っています。そんな私がこんなイベントに参加してきました。
目次
ソラチエースについて自分の覚えていることいくつか
今回は何かとお世話になっている木暮氏が主催したイベントでして。
今年4月9日に発売された、サッポロビールのInnovative Brewer SORACHI1984について、ブリューイングデザイナー新井健司さんに話を聞いてみようという内容です(ブリューイングデザイナーって何? ということを聞き忘れた)。
Innovative Brewer SORACHI1984は、発売されてから缶で飲みました。ソラチエースというホップだけを使っていて、そのソラチエースの特徴を存分に引き出したビール、とでも言えるでしょうか。
実際に飲んだ第一印象は、なぜかココナッツ感が! という感じ。ソラチエースって、レモンっぽさもあって、ものすごく特徴的なホップだなと。
実際にイベントでも飲んでみて、このときは樽でしたが、同じような印象を受けました。よりクリーンな感じも。
そういえばミッケラー
で、飲んでいたら思い出したんです。もう7、8年くらい前のことですかね。ミッケラーがシングルホップシリーズを出していたんですが、そのときにもソラチエースのビールを飲んだことがありました。
その時の印象は「酸味がすごい!」
小並感バリバリです。まあ、酸味自体はホップ由来のものではないので、表現として適切ではないかもしれませんが、レモン様のアロマ・フレーバーが感じられるホップだということは、なんとなくそのときに認識したように思います。
そういえばビール王国
もうひとつ思い出しました。ソラチエースの育種に携わったサッポロビールの糸賀裕さんに、電話でインタビューしたことがあったなと。『ビール王国』の記事でアメリカンホップについて書いているときでした。
それが2017年。そのときにはソラチエースについて、実はそこまで注目していませんでしたが、クラフトラベル THAT’S HOP 伝説のSORACHI ACEが2015年に出ていましたね(下記写真では2015年と書いてありますが、2016年じゃないかな……)。で、2018年には1缶当たり1000円弱というOnce in a Lifetime Chance 伝説のホップ ソラチエースが限定発売され、2019年のInnovative Brewer SORACHI1984につながるわけです。
Innovative Brewer SORACHI1984で乾杯
自分の話は置いといて、イベントの話に戻ります。
登壇者としてはブリューイングデザイナーの新井さん1人ですが、この日は関係者も2人いらっしゃっていました。
営業の遠藤さんは、今回の会場であるBeer Terrace 1949 HIBIYASAROHの担当。
そして、クラフト事業部の永井さんが乾杯のご発声。
乾杯なのにビールが少し減っているのは、待っているとアレだから先に飲めという主催者の指示に皆さんが従った結果。
そして、こちらが新井さん(左)と木暮氏(右)。
お土産もいただいてしまいました。最近発売されたばかりのInnovative Brewer SKY PILSと昨年限定発売されたInnovative Brewer SECRET TAP Brew#001。
普段よりもビールが進んだ気がします。それはビールそのものが持つ味わいによるものか、料理との相性なのか、イベントという特別感なのか。このイベントでは、Innovative Brewer SORACHI1984が飲み放題ということでしたが、自分は2時間で3杯。適正飲酒です。
ソラチエースというホップはいったい何なのか
このイベントは、Innovative Brewer SORACHI1984というビールがテーマなのですが、結局はソラチエースというホップの話につながるわけですね。ソラチエースがあったからこそできたビールなので。
じゃあ、ソラチエースというホップは何なのかということなわけですが、Innovative Brewer SORACHI1984のプレスリリースから引用しましょう。
「ソラチエース」は、1984年に北海道空知郡上富良野町にあるバイオ研究開発部で当社が開発したフレーバーホップ(注3)品種で、開発当時は斬新すぎる特長が日本では受け入れられず、1994年に渡米、その後30年の時を経て、ビールの味に違いをつくるホップとして世界中のブリュワーから認められ、重宝される(注4)話題のホップになりました。
(注3)フレーバーホップ:ホップの品種の中でも個性的な香りを持つホップ。
(注4)世界中の有名ブルワリーが同品種を用い、商品名や商品特長に同品種を謳った商品が存在。
見事です。さすがです。ソラチエースの特徴について、簡潔に1文でまとめています。
ただ、やはりこれはプレスリリース。この1文の中には、1984年(開発はもっと前)から続くストーリーがつまっているんですね。それをまとめた6本のムービーが、サッポロビールのウェブサイトにアップされています。
雰囲気的には『プロフェッショナル 仕事の流儀』な感じなので、見てみてください。
このムービーを流しつつ、新井さんがコメントしていくというスタイルで進行。新井さんを含む4人のストーリのつながりがカッコいいのです。
この6つのムービーの2本目に出てくる、ソラチエースの育種に携わった荒井康則さん。この方は「ソラチエースは使わないほうがいい」とも言っていたそうで、一歩間違えればソラチエースを潰していた人だったかも、なんて話も。
使わないほうがいい、使えないというのは、その当時、求められていたホップは香りが穏やかで爽快な苦味を出すことができる品種だったから。そういう意味で、ソラチエースは香りが強すぎたホップでもあったわけです。
1984年は『風の谷のナウシカ』が公開された年。その当時は、ビールに香りは求められていなかった、と。
それが、アメリカに渡って評価され、クラフトビールの波とともにソラチエースが日本に帰ってきたということ。つまり、日本でも多様性が理解されるような世の中になり、ビール文化としても多様性を受け入れられる土壌ができていたわけです。
新井さんに聞いてみた
自分の興味としては、ビールの味わいそのものよりも(もちろんおいしいビールが好きなのですが)、ビールと文化的背景のほうに寄ってしまうんですよね。
で、「開発秘話を飲みながら聞いちゃおう」というイベントなので、そのあたりを聞いてみました。このInnovative Brewer SORACHI1984というビールが1984年にできていたとして、その当時の人たちに受け入れられたと思うかどうか。
答えとしては、難しかったんじゃないかな、としつつも、このビールがきっかけで嗜好が変わったかも、と。
「もし」の話なので、正解はないのですが、自分も新井さんとほぼ同じような回答を持っていて、生みの親はどう思うのかを確認したくて聞いたようなものです。
やはりソラチエースは尖っていたんですよね。で、その当時は尖ったものはあまり受け入れられない文化的背景があったように思います。その時期を子どもながらに生きていて、そう感じていた部分もあるので。
でもその一方で、飛び抜けた才能が杭を打たれ続けた時代でもなかったような気もするんです。問題は、その飛び抜けた才能が目に留まるかどうか。そして、目に留まりにくい時代でもあったんですよね。
でも、ソラチエースのような尖った才能があったら、もしかしたら……とも思うわけです。中二病の自分としては、そんな尖ったソラチエースが羨ましく思ったり。
誰でも星になれる
でも、今はそんな時代ではないのです。ちょっとした尖りでも、そこに個性は見出せますし、その個性を発信できる時代でもあります。尖りもひとつではなく、5つあってもいい。
「丸くなるな、星になれ。」というキャッチコピーを打ち出しているビール会社があるようですが、いまはそんなイメージの時代になっているような気がします。誰でも星になれる時代。
そうそう、ソラチエースって1974年に開発が始まったらしいんですよね。品種登録は1984年だけど、1974年から歴史が始まったということで言えば、自分(1975年早生まれ)と同級生。1974年生まれには松井秀喜もいるし、ソラチエースと自分もいて、これはまさに黄金世代としか言いようがない。
世界的な星になった同級生が2人もいるからには、そろそろ自分も、と思わずにはいられない一日でございましたとさ。
私からは以上です。本日はありがとうございました。
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