ビール時報

富江弘幸(ビールライター)公式サイト

ランチタイムにランチを食べない客にも優しいT. Y. HARBOR

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ホント小心者の私です。

5月10日、天王洲アイル。

その日は朝から代官山にいまして、代官山と一体化するまであと一歩のところまで迫りながら、やっぱり「私は新宿の子です…」と言うまでの話に関連するんですけれどもね。それらの話は下記をご覧ください。

簡単に言うと、5月10日は代官山と新宿と天王洲アイルにいました、ということです。しかし、ブログを書いている間に魔空空間に引きずり込まれたようで、時間軸が多少ずれています。ブログを書いた順番は、

代官山 → 新宿 → 天王洲アイル

なのですが、正しくは、

代官山 → 天王洲アイル → 新宿

という流れになります。

ブログを書いた順番はずれてしまいましたが、『スター・ウォーズ』のエピソードなんちゃらみたいなものだと思っていただければ、特に問題はないかと思います。

スプリングバレーブルワリー東京から恵比寿駅まで歩き、恵比寿から埼京線・りんかい線で天王洲アイルへ。

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天王洲アイルの思い出2点

さて、天王洲アイルです。

天王洲アイルには、テレビ東京の天王洲スタジオがあります。以前、某芸能人の取材のため楽屋を訪れたことがあったのですが、実際に取材してみると、すごくいい対応をしていただいて、かなり好感度がアップしました。が、ここで実名をだして変なことになってもアレなので(変な取材ではないですけれども)、小心者としては差し控えておこうと思います。

そんな思い出がある天王洲アイル。

ついでにもうひとつ自分の思い出を披露しておきましょう。んなもんはいいから早くメインを、という方は次の見出しへワープしてください。

17年前、初めて自分が制作に携わった本(『東京・横浜クリスマス完全ガイド』)で、天王洲アイルにある「T. Y. HARBOR(ティー・ワイ・ハーバー)」という店を紹介してるんですよね。先輩が取材した資料を使ってこの記事を書いたような覚えがあります。

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「常時5〜6種類そろう地ビールと」と書いてますね。今なら「もっとビールのことを詳しく書かんかい!」と思ったりしますが、ま、時代も時代ですし、クリスマスの本ですからね。こんなもんでしょう。

小雨の中T. Y. HARBORへ

で、その「T. Y. HARBOR(ティー・ワイ・ハーバー)」は、天王洲アイル駅と天王洲スタジオの間にあります。

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天王洲アイルは、代官山とはまた違った感じのシャレオツな地域。もともとは倉庫ばかりの地域でシャレオツ感とは縁のないようなところだったんですが、バブル期に開発が進んでシャレオツになっていったんですよね。

そんな天王洲アイルでずっと倉庫業を営んできた寺田倉庫が経営しているのが、このティー・ワイ・ハーバー。天王洲アイルのシャレオツ感を引っ張っていってる感じの店です。醸造所も併設していて、実際にここでビールを造っています。

ランチを食べずにSサイズ

店に着いたのは11時半。ランチタイムです。普通の人はランチを食べに来るわけです。この日は小雨が降っていましたが、この店のテラスはちょっとしたルーフがあるので、雨でもテラスでランチが食べられるのです。

しかし、私は代官山で10時過ぎに中途半端なモーニングを食べてしまってある程度満足してしまっているため、ランチを食べるつもりはまったくありません。それでもちょっとテラスで1杯、と洒落込みたい。そんな思いでわざわざ天王洲アイルまで来ております。

私「ビールだけでもいいでしょうか」
店員さん「大丈夫ですよ。では、カウンターのお好きな席へどうぞ」

ランチタイムにランチを食べない。そんな引け目のある私に「テラスで飲みたいんですけどいいですか?」なんて主張できる能力は持ち合わせておりません。「ビールだけでもいいでしょうか」が精一杯です。

結構この時点でHPが減っているわけですよ。普通の人は減らないんでしょうけど、かなり個人的には削られています。

店員さん「ご注文は?」
私「ペールエールの…Sを」
店員さん「はい、ペールエールの…Sですね」

「S」を強調された感じがしました。たぶん強調はしていないんだと思います。ランチタイムなのにランチを食べないどころか、Sサイズ。Sサイズですか。ほお〜う。と思われていそうな感じがしてしまうだけです。

ですが。

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どうですか、この美しさ! Sサイズなのに美しさはLサイズ! これだけでベホイミ的にHPが回復しました。

そしてコレ見てください、コレ。

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この泡のクリーミーさ。

もうたまらんです。モーニングバーガーでそこそこ腹が膨れている状態ですが、そんな状態でもしみじみとしみわたる味わい。ホップのキリッとした苦味が口の中を引き締めて、また次の一口へと誘うのです。

ゴクゴクと飲み干してもいいくらいのうまさですが、腹はそんな状態でもありません。Sサイズを30分くらいかけて飲んでいました。平日の昼間から飲む。いい時間です。

1杯だけですんません

そして飲み終わるかどうかという時に店員さんに聞かれるわけです。

店員さん「次はいかがですか?」
私「あ、これで結構です」

文章で書くとこれくらいですが、自分にとってこの会話はとても長いものに感じられました。「次はいかがですか?」の後に、酔ってあまり回らない頭をフル回転させ、その時間はビッグバンから現在までに匹敵するくらいの長さだったように思います。

まあ、ビッグバンから今まで生きているわけじゃないから、半分ウソですけれども。

そうしてまたHPが削られていくわけですが、お会計を終えると(もちろんレジではなくカウンターで!)、店員さんがスッとお冷を出してくれて、

「今日はお休みですか? 昼から飲むってのはいいですよね」

と優しい言葉をかけてくれるわけです。ランチタイムなのにランチを食べない客に。ランチを食べないどころかSサイズを1杯しか注文しない客に。

「ありがとうございました」

いえいえ、こちらこそありがとうございました、と心の中でつぶやいて店を出るのです。

天王洲、いいじゃないか。

 

TOmagazine 品川特集号 (双葉社スーパームック)

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