ビール時報

富江弘幸(ビールライター)公式サイト

【無料公開】2019年3月発売予定のビール新書冒頭部分を一部公開します

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著者の私です。

 

当ブログで2冊目の著書を出版することが決まったという話を書きましたが、それ以降、順調(からはやや遅れ気味)に執筆が進んでいます。

www.hiroyukitomie.me

 

この本は、ビールの多様性と自由さを軸に、知的好奇心を刺激することを目的にしています。で、どんな内容なのか……については、執筆の合間にちょこちょこ書いていこうと思いますが、今回はその冒頭の一部を無料公開してしまおうと。

 

もちろん出版社からは無料公開の了承をいただいています。ただ、こちらはまだ編集者による編集を行っていないどころか、著者の私が見直しすらしていないものです。

 

なので、出版後にはもう少しこなれた日本語になっているでしょうし、一部違う内容になっている可能性もあります。また、これを読んでご意見・ご感想をいただければ、それを内容に反映することもあるかもしれません。

 

そういったレベルの原稿だということをご理解いただいた上で、以下ご覧いただければと思います。

 

どうぞ!

BEER CALENDAR

BEER CALENDAR

 

「ビールはどれも同じような味」という固定観念

よなよなエールというビールをご存知でしょうか。

 

長野県軽井沢町に本社を構える、ヤッホーブルーイングという醸造所が造っているビールです。ヤッホーブルーイングが造るビールはどれも個性的で、一度見たら忘れられないくらいのネーミングやデザインのビールばかり。よなよなエールは、そのヤッホーブルーイングが最初に造ったビールで、1997年から発売されています。

 

実は、大手ビール4社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービール)以外で、私が人生で初めて飲んだビールは、このよなよなエールなのです。もう20年くらい前のことなのですが、それを手にとったとき、飲んだときの状況はよく覚えています。

 

よなよなエールを初めて目にしたのは、当時住んでいた家から一番近いスーパーのお酒売り場。まだ成人して数年しか経っていませんでしたが、ビールは大好きでお酒を飲むとなればいつもビールを飲んでいました。しかし、特に決まった銘柄はなく、新しいものや珍しいものに手を出したがる性格でもあったので、新商品や見たことのないビールがあれば買って飲んでいたのです。

 

そして、いつものようにスーパーに立ち寄ってお酒売り場を見ていたら、よなよなエールがすぐ目に入ってきました。闇夜に月が明るく浮かぶ、ビールっぽさはなくもないけれど「ビール」らしくないデザイン。夜にゆっくり飲んでみようと思わせる「よなよな」というネーミング。

 

棚に並ぶ他社のビールに比べ、よなよなエールは視覚的なアピール度がずば抜けていました。購入して家で飲んでみると、ビールの色合いからして違います。いつも飲んでいたビールよりももう少し濃い色合い。その当時は「あ、他のビールとなんか違う」くらいにしか思いませんでしたが、味やネーミングになんとなく好意を持ち、その後もよく買って飲むようになりました。

 

いまでもよく飲むビールのひとつですが、私にとっては「大手ビール会社以外のビールで初めて飲んだ銘柄」という、記念すべきビールなのです。

 

一方、「人生で初めて飲んだビールの銘柄は?」と聞かれると、実は答えられません。よなよなエールに比べると、大手ビール会社のビールは見た目や味わいのインパクトに違いを見出しにくかったということもあるのでしょうが、これは大手ビール会社が悪いわけではありません。その頃は「とりあえずビール」全盛期で、私自身がビールの銘柄にあまり注目しておらず、「ビールはどれも同じような味」という固定観念があったということに起因しています。 

よなよなエール 350ml×24本

よなよなエール 350ml×24本

 

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ビールとはゴクゴク飲める爽快感のあるお酒という固定観念

初めて飲んだ外国産ビールもよく覚えています。

 

セバスチャン グランクリュというベルギーのビールで、見た目の珍しさから購入したものです。池袋の東武百貨店にあるお酒売り場をたまたま覗いてみたら、ベルギービールをはじめ外国産のビールがずらりと並んでいました。そのなかでも、セバスチャン グランクリュはスイングキャップのボトルが印象的で、栓抜きで王冠を取った後はスイングキャップを使って封をしておくことができるものです。

 

それがどんな味なのかも気にすることなく、見た目が珍しいということだけで購入。友だち数名と集まったときに飲んでみました。しかし、実際に飲んでみると、ビールらしい爽快感がほとんどなかったのです。ゴクゴク飲めない。ビールとは思えない香りがある。

 

私も含め、セバスチャン グランクリュの評価は決していいものではありませんでした。今から考えればその評価は正しくなかったかもしれない、と思えるのですが、それは「ビールとはゴクゴク飲める爽快感のあるお酒」という固定観念があったからかもしれません。

 

しかし、「ビールはどれも同じような味」「ビールとはゴクゴク飲める爽快感のあるお酒」ということが固定観念だと思っていない方は、意外と多いのではないかと思います。しかし、ビールについていろいろ調べたり飲んだりしていると、「これは本当にビールなのか」と思うような味わいのビールがたくさんあることに気づき、「ゴクゴク飲むだけがビールではない」ということがわかるようになってきました。

 

ビールに限った話ではありませんが、物事を理解する際には、できるだけ固定観念にとらわれるべきではないと考えています。ポジティブに言い換えると、「自由に物事を考える」といえるでしょうか。実は、自由な発想で造られたビールは世の中にたくさんあります。ウイスキーの樽で熟成させたビール。山椒を使ったビール、酢のような酸味があるビール……。例を挙げればキリがありません。

 

例えば、ウイスキーの樽で熟成させたビールは、総じてアルコール度数を高くしており、10%以上になるものばかり。ウイスキーの樽で熟成させることで、ビールにウイスキー樽のフレーバーが加わります。飲んだことはなくても想像はできるでしょうか。アルコール度数が高く、どっしりした味わいでウイスキー樽のフレーバーのあるビール。ゴクゴク飲むのに適したビールではありません。

 

セバスチャン グランクリュはウイスキー樽で熟成させたビールではありませんが、比較的濃厚な味わいでアルコール度数も高く、ゴクゴク飲むシチュエーションで選択するビールではありません。その意味では、私自身の飲み方や選択が間違っていたということで、ビール自体の評価を下げるものではないのです。

 

つまり、シチュエーションに合わせればとてもおいしく飲めるビールといえるでしょう。セバスチャン グランクリュは、初めて飲んだ外国産ビールということだけでなく、改めて固定観念について考えさせられるという意味でも、私にとって忘れられないビールのひとつといえます。

ご意見・ご感想を!

以上、冒頭の一部の無料公開でした。今後もどこかの一部分を抜き取って、こちらで公開していく予定です。

 

ご意見・ご感想がありましたら、ページ下部「コメントを書く」から、もしくは「お問い合わせ」ページからお送りいただければ幸いです。

www.hiroyukitomie.me

私からは以上です。本日はありがとうございました。