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電子書籍を読む気にならない理由

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本好きな私です。

本でなくても、何かスキマ時間には字を目にしていたいという性分なので、本好きというよりは活字好きなのかもしれません。つまり、紙の本でなくても、電子書籍でもYahoo!ニュースでも、Twitterでも、活字があれば(ほぼ)何でもOKなワケです。

が、電子書籍についてはちょっと一家言ありまして、あまり読む気にはならないのです。何も読むものがなければ、手を出してもいいかな、という程度。

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今回は、電子書籍に手を出そうと思わない理由について書いておきましょう。

電子書籍よりも紙の本が好きという人の中には、紙の質感がいいんだとか、目に優しいんだとか、電子書籍は所有している気がしないとか、そんなことを言う人が多いんですよね。まあ、自分もそう思うことはあります。が、自分が電子書籍に惹かれない理由はそれだけではありません。

もうひとつ決定的な理由があります。なぜみんなそう思わないのかがすごく不思議なのですが……。

電子書籍が自分の土俵で相撲を取っていないから。

ということです。これだけでは理解しにくいかと思いますので、どういうことか説明していきます。

電子書籍以外の電子媒体は紙媒体を自分の土俵に引き込んできた

紙という素材を使って情報をまとめた書籍という媒体がありますね。これは紙というものが作られて以降、形は多少変わっても同じような概念の媒体です。いわゆる書籍です(ここでは雑誌も書籍に含むこととします)。これを「紙媒体」ということにしましょう。

情報の伝達は何千年もの間、紙媒体が支配してきたのですが、20世紀になると電子データでさまざまな情報をやりとりすることができるようになりました。これは非常に便利です。瞬時に情報を送ることができ、物理的な大きさもかなりコンパクトにすることができます。ウェブサイトを含め、電子データを使って情報をやりとりできるものを「電子媒体」ということにしましょう。

この電子媒体は、徐々に紙媒体の分野にまで勢力を広げるようになりました。これは書籍に限った話ではありません。

伝統的なツールに電子媒体が手を出してきて勢力図が変わったもののひとつに、「メール」があります。メールはもともと「手紙」という紙媒体でした。今でも紙媒体の手紙は存在していますが、メールの便利さに勢力がかなり縮小されてしまっています。

今では、「手書きだと書いた人の人柄が表れる」とか、「年始の挨拶はやはり年賀状で」とか、情緒的な部分に勝機を見出すしかない状況。まあ、メールが便利なんだから仕方ないと思います。

自分も手書きは好きで、請求書を送ったりするときは必ず宛名を万年筆で書きます。年賀状もできるだけ手書きで一言入れます。でも、それと便利なのとは別な話。

なぜメールが手紙に勝ったのかというと、自分の土俵で相撲を取ったからです。

メールのフォーマットを紙に合わせていないからなんですよね。ハガキサイズに文章を収めないといけないとか、メールを送るのに1通1通の料金を払わないといけないとか、そんなことをしていたら不便です。

ニュースは電子のフォーマットに紙の情報を合わせている

ニュース記事もそうですね。

とある大学の講座で、紙の新聞を読んだことがあるかどうか聞いたら、受講生全員が「ない」と答えました。みんなYahoo!ニュースやスマートニュースなどを見ると。まだ紙の新聞はそれなりに売れていますが、大学生に限っていうと電子媒体の圧勝です。

これも電子媒体が自分の土俵で相撲を取っているからです。

Yahoo!ニュースは新聞紙と同じフォーマットを使っていますか? そんなことないですよね。見出しがいくつか並んでいて、それをクリックするとニュースの本文が見られるようになっていて、非常に便利です。基本的に購読料は無料ですし。

例えば、Yahoo!ニュースが新聞紙と同じフォーマットを使っていて、トップページに新聞1面の画像が出ていたらどうでしょうか。それを拡大して読んだり、ページをめくったりとか、考えただけでも非常に面倒です。

新聞で掲載するニュースを、ウェブサイトのフォーマットに合わせて掲載し、情報発信もスピーディーになった。そうやって電子媒体の土俵に引き込んできたんですね。

メールもニュースも、電子化すると便利になったんです。

電子書籍だけが紙の土俵で相撲を取っている

で、メールやニュースに比べて、なぜか電子書籍だけが紙媒体の土俵で相撲を取っているんです。

ページを拡大して読んだり、ページをめくったり、あんな面倒なことをなぜ電子媒体でやらないといけないのでしょうか。最近は少なくなってきたと思いますが、紙でページをめくるのに似せた音やアクションを電子媒体につけたりしているものもあり、なんとムダなことをしているのかと。

何が楽しいんですか、それ。

電子媒体のメリットをまったく生かしていないんですよね。「ひとつのメディアに何冊も本が入っているから持ち運びに便利じゃないか」という人もいるんですが、それとはちょっと論点が違います。電子書籍は「読みやすさ」という便利さを排除してしまっているんですよね。

メールもニュースも、便利さということを最優先にすべきものだと思うのです。電子書籍もしかり。ただ、電子書籍は便利さだけではなく「面白さ」も求められるんです。

紙ではできないことをやれば面白い

電子書籍は、ある程度の「便利さ」を求められるのは当然として、それに加えて「面白さ」が求められます。極端なことを言うと、メールとニュースは面白さを求められないんですよね(面白いニュースがあるのは否定しませんが、一番求められるのはそこではありません)。

なので、面白い本を電子書籍化すると、それはやはり人気になると思います。が、紙でも書籍でも面白さは基本的に同じですよね。内容が一緒なんですから。そうすると、「紙のほうが質感があって、所有している感じがするから紙のほうがいい」と思う人がいるという意味もわかります。

じゃあ、電子媒体はどうしたらいいかというと、自分の土俵で戦うということ。紙ではできないことを電子媒体でやればいいのです。

ある程度の双方向性を持たせるとか、他メディアとの連携とかもそのひとつでしょうか。ただ、そうなると「書籍」とは言えなくなりますが、それはそれで書籍とは違うメディアとして存在すればいいのではないかと思います。そもそも「電子書籍」と言っている時点で書籍の土俵にいるわけですから、それだけで魅力を出し切っていない感じもします。

電子媒体でテキストを読むならこの形

とはいえ、ただテキストを読むだけの「電子書籍」も必要です。電子化するからといって、必ず紙との差別化をしないといけないわけではありません。ただ、そうなった場合、上記で書いたような、ページをめくるとか電子化にふさわしくない仕様を省いてほしいと思うわけです。便利ではないから。

ということで、書籍を電子化するのであれば、cakesのような形態がいいんじゃないかと思っています。マネタイズをどうしているかは置いといて、テキストを電子媒体で読むにはこういった形態が最適だと思うんですよね。ページをめくるとか本当にアホみたいなので。

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ちなみに、自分もこのcakesで連載していました。宣伝です、ハイ。

cakes.mu

cakesは読みやすいです。PC、タブレットスマホのどれでも読むことができますし、最適化されます。ページめくりといった煩わしさはありません。テキストが流れていて、間に画像が入るシンプルなもの。「電子書籍」が求めるべき便利さって、コレだと思うのです。

cakesは電子書籍という言い方は適さないかもしれませんが、書籍の一部を掲載しているコンテンツもあります。テキストを読むという意味での電子書籍が向かう方向というのは、こっちなんじゃないかと個人的には思うのですが、いかがでしょうか。

まとめ

ちょっととっちらかった感じの文章になってしまいました(後日整理します)。が、まとめると、電子書籍は「読みやすさ」という便利さを考えていないから、自分は読む気がしないということなのです。紙の本のほうが読みやすいじゃん、と。

最終的には(何が最終かというのも難しいのですが)、Yahoo!ニュースのように新刊の見出しが出ていて、クリックすると数ページ分が読めるというような状況になるといいのではないかと思います。もちろん読者はフリーで。

場合によってはすべてのコンテンツが無料で読めるようになってもいいのでは、と(もちろん制作側に金が入らないということではなく)。マネタイズについては別の話なので、そのうち考えを書きたいと思ってます。

さて、夜も更けてきたので、ベッドに入ってcakesでも見るとしましょうかね(寝落ち予定)。

 

↓こんな記事を書いておきながらアレですが、Kindle版もあります(笑)。

ビール王国 Vol.13 2017年 2月号 (ワイン王国 別冊)

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