ビール時報

富江弘幸(ビールライター)公式サイト

お土産復活を期待したい株主総会

この記事をシェアする

キリンホールディングス株式会社の株主総会に出席してきました。

その様子を偏った視点で記しておこうと思います。念のため最初にお伝えしておきたいのですが、「偏った」というのは「株主だからキリン寄りの視点で書く」という偏りではありません。その逆でもありません。

さて、キリンビールの株主になったのは昨年からで、理由は株主優待株主総会に興味があったからです。ビアライターとしても一度はビール会社の株主総会を見ておくべきだろう、という思いもあり。実はキリンホールディングス株式会社だけでなく、株主総会自体に参加したことがなかったため、非常に楽しみにしていたのです。首をこれでもかと可能な限り長くして待っていました。

株主総会は招集案内が届くところから始まっている

株主総会前には株主総会招集の案内が郵送で届きます。株主優待の案内も同封されていたのですが、それらの書類に書いてある注意書きを見て愕然としました。

f:id:hiroyukitomieme:20170307214611j:plain

「本年から、株主総会ご出席株主様へのお土産の配布を取り止めさせていただくことになりました」

マジか!
なぜ今年から!
来年からでもいいんじゃないか!
今からでもいい、考えなおせ!

と思いながら、手は「キリン 株主総会 お土産」とGoogleの検索窓に打ち込み、「ッターン!」とエンターキーを力強く叩いていました。調べたところ、例年だとビールを含む飲料3、4種とお菓子、グッズがもらえたようです。しかし、キリン側の意思はかたいようで、株主総会招集通知の表紙だけでなく、とどめを刺すかのように最終面の会場案内にも赤字でお土産配布取り止めの注意書きが書かれていました。

落ち着きを取り戻すためにビール(キリンではない)をひと口飲んだところで、他の書類に目を通すと、株主優待についての案内が。株主優待については内容がだいたいわかっていたので、ほぼ予想通り。いくつか種類を選べるのですが、当然のことながら限定ビール4種を選びました。

そして、思いもよらぬ「株主様ご優待クーポンのご案内」という書類も。

f:id:hiroyukitomieme:20170307214626j:plain

キリン オンラインショップ DRINXで使える500円分のクーポンでした。500円とはいえ、予想していなかったのでこれはありがたい。DRINXではスプリングバレーブルワリーのビールが買えるんですが、一番安い6本パックでも2,160円(税込2,332円)と高い印象だったので、これまでは利用していなかったのです。500円オフになるなら、と思い早速DRINXのサイトを確認し、購入手続きを進めました。

買いたいビールをカートに入れ、お届け先・お届け日の指定、支払い方法の指定、クーポンコードの入力をして、申込内容の確認……

合計金額(税込) 2,696円

ん? クーポン使ったのになぜ高くなる? と内訳を見てみると、

・送料540円
・代引手数料324円

って、おい! 500円クーポン使っても送料にもならないじゃないか!

まあ、代引手数料はクレジット払いにすればいいんだけど、送料にもならないってのはどうなのか…。これは雨が降ろうが槍が降ろうがビールが降ろうが株主総会に出席して、経営陣に問いつめないといけない、と強く思った次第。

大人がお土産について議論を尽くす株主総会

さて、そんな経緯があって、鼻息荒く株主総会に向かったわけです。

f:id:hiroyukitomieme:20170307214656j:plain

会場のホテルに着くと、事前に送られてきていた議決権行使書と引き換えに、入場票をもらいます。会場に入る前には「生茶」か「午後の紅茶」がもらえました。まあ、お土産はなくしても、最低限これくらいはほしいですよね。

座っている株主を見渡してみると、予想通り「おっさん〜おじいちゃん」の範囲の方々が多い印象。まあ、自分もその範囲に入っているわけですがね。ちらほら若い女性もいましたが。

総会はキリンホールディングス株式会社社長が議長。映像を交えながら、今期について説明していきます。で、説明が終わった後はお待ちかね、議案3件の決議前の質疑応答です。つい30分前までは鼻息荒かった私ですが、実際、あれだけの人数を前にマイクで実名をさらして質問するという状況になると「経営陣に問いつめないといけない」という強い気持ちは過去のものでした。はい、チキンです。

そんな感じでおとなしく質疑応答を聞いていたのですが、3人目くらいの質問者がやってくれました。

株主総会出席のお土産を取り止めたことは納得がいかない。『出席していない株主との公平をはかるため』という理由だが、出席している株主は時間と交通費をかけて来ている。それを出席していない側に合わせるのは、それこそ不公平ではないか」

会場からは大きな拍手。さらに続けます。

「また、DRINXで使えるクーポンも入っていたが、500円というのはどうなのか。ワンコインではなく、ワン紙幣くらいでもいいのではないか」

キリンが応援しているサッカー日本代表がゴールを決めた瞬間のように、今日一番の拍手が会場に鳴り響きました。同じことを思っている人ってのはいるもんですね。しかもこんなに大勢。経営陣の回答としてはサラッと「貴重なご意見をいただきありがとうございました」的な感じだったので、来年の株主総会に期待したいところ。お土産ほしいぞ。

他には、事業内容についての質問もあれば、質問ではなく「キリンがんばれ宣言」のような発言もあったりで、もう何十年も生きてきた大人たちが立派な会場でこんなやりとりをしている日本って素晴らしいと思った次第です。

最後には「議論も尽くされてきたと思われますので、決議に移りたいと思います」との社長の言葉。果たしてこれらは議論だったのか、しかも本当に尽くされたのか、という疑問を持ちながらも、そんな言葉を大切にする日本の株主総会で、自分も決議の拍手をしてきたというわけです。

実際に参加してみると、思った以上に経営陣からしてみたら大変な質問が多かったですね(具体的には書きませんが、株主とはいえそんな態度でよく質問できるな…ということも)。それに対して常に真摯な態度で回答していた経営陣は素晴らしい。

最後に念のため記しておくと、キリンが嫌いなわけではありません。こんな文章を書きましたが、キリンの取り組みは評価しています。一方で、ビアライターとして中立でもありたいと思っていますが、来年お土産が復活したら中立でいられるかどうか、不安なところです(嘘です)。