ビール時報

富江弘幸(ビールライター)公式サイト

すぐ好きになる

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すぐ好きになってしまう私です。

共演者をすぐ好きになってしまうという、ちょっと前に残念な話題となっていた芸能人とはちょっと違う。が、どうやら自分もすぐ好きになってしまうというような意味では似ているのかもしれない。

といっても、お仕事でご一緒した人をすぐ好きになってしまうわけではありません。まあ、好きになるといえば好きになるんだけど、某芸能人のような好きということとは違うんです。恋愛ではない。うーん、説明は難しいけど、違う言い方をするならば、応援したくなってしまう、ということでしょうかね。

例えば、醸造所の取材に行ったとします。

普段、特に何も考えずに飲んでいるビールでも、醸造所で造り手に話を聞いてその思いを知ったら、その瞬間からファンになってしまったりするわけです。できるだけその魅力を伝えたいと思ったり、執筆が終わった後でも、その醸造所のことが気になって仕方がなくなるんです。そうやってすぐ好きになってしまう、と。

2016年夏のこと。

岩手県遠野市に行きました。

遠野市はホップ栽培が盛んなところ、といっても最盛期の4分の1ほどまで生産量は減少してしまっているんですが、今でも日本有数のホップ生産地になっています。

その遠野のホップ畑と収穫の様子を見学し、某ビール会社のホップ研究者に話を聞いたのが6月20日でした。家を朝5時に出て、昼過ぎには遠野を離れるという超短期滞在。遠野にいたのは2時間弱。

そんな超短期滞在でも、遠野の山々や農村風景を見ていたらすぐ好きになってしまったし、今度は観光でしっかり訪れたいと思ったのです。

それなのに。

5日後の台風9号の影響で遠野のホップがかなりの被害を受けてしまったようなのです。ニュースに掲載されていた写真を見て愕然としたというか、なんと言ったらいいか。

自分が見学したのとは違う畑だとは思いますが、記事中の写真と自分の記憶との違いに言葉が見つからない状態。ホップに限らず、農業というのはこういった自然のリスクにさらされているものだということは頭で理解できているのだけど、やはり好きになってしまうと感情から先に出てきてしまうんですね。台風の日に畑や田んぼの様子を見に行ってしまう人の気持ちが少し分かったような気がします。

この台風のせいで収穫減ということだけれども、このホップを生で使った限定のビールが10月に発売されました。台風9号の被害がなければ、何も考えずに最高にうまいと思えるビールになるはずだったんですが、実際飲んでみるといろいろ考えてしまいました(ビール自体は最高にうまかったんですけど)。

まあ、そんな感じですぐ好きになってしまうんですが、人見知りだってこともあって、なかなか思いは伝えられずにいます。